月: 2018年7月の記事一覧
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司馬さん一日一語☞『推敲』(すいこう)
文章の辞句を あれこれ考えることを “推敲”するという。 唐代の詩人に、賈島(かとう)という人がいる。 賈島は、迷いの多い性格をもち、その生涯もその性格にふさわしくひそやかだった。 そのあたり、なんともいえず私はすきであ […]
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司馬さん一日一語☞『助勤』(じょきん)
助勤とは、 幕末の京における 新選組の組織上の 用語のひとつ なのである。 新選組は、組織としては、前例のないしくみになっていた。 組織の長は、いうまでもなく近藤勇であった。 近藤は、組織上、超然たる存在だった。 副長で […]
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司馬さん一日一語☞『縄文時代』
日本の新石器時代は、 学者たちが ヒトの暮らしへの 愛をこめて 縄文時代と命名した。 縄文時代とは、いうまでもなく、一万年間(米作が紀元前数百年前に伝来するまで)ほどつづいた先史時代の名称である。 その土器に縄目が刻まれ […]
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司馬さん一日一語☞『上人』(しょうにん)
葬式をするお坊さん というのは 非僧非俗の人、 お上人でした。 いまは、日本語が紊乱しまして、上人(しょうにん)と言うと、 偉い人のようにきこえますが、 上人というのは資格を持たない僧への敬称であって、たとえば 空海上人 […]
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司馬さん一日一語☞『浄土』(じょうど)
浄土は地理的に 西方にある。 そこに光明そのもの というべき 阿弥陀如来が おられて、 いっさいの人間を 救ってくださる というのである。 覚鑁(かくばん)は「密厳浄土ということをさかんにとなえた」人。 空海がひらいた真 […]
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司馬さん一日一語☞『春慶塗』
春慶というのは、 人の名らしい。 一説では十四、五世紀ごろ、堺に住んでいた漆工で、この塗りはこの人の工夫にかかるといわれている。 漆といっても、ぼってりと塗りかさねられた上手(じょうて)なものではない。 木目などの生地の […]
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司馬さん一日一語☞『遮光器土偶』
古代人は、 写実がつまらないと おもっていたらしく、 好きな部分を 思いきって誇張した。 亀ヶ岡は、標高約15ないし20メートルほどもある。 この丘が縄文晩期、あたかも都市のように栄えたのは、 まわりに大小の湖沼をめぐら […]
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司馬さん一日一語☞『しづ』
「しづ」という 古代の織物は、 平安時代ぐらいまで 存在したろう。 私どもの先祖はそういうものを着ていて、寒さをしのいだのである。 梶の木という木の繊維と麻の繊維で、スジや格子模様を織りだす織物をいう。 織り模様を出すと […]
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司馬さん一日一語☞『醜男』(しこお)
醜は、古語である。 にくにくしいまでに 強いこと、あるいは そういう人をさす。 『古事記』を真にうけるとすれば、その始祖は健速(たけはや/勇猛で敏捷)なスサノオ命(須佐之男命)である。 その首都は、出雲の須賀にあった。 […]
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司馬さん一日一語☞『樒』(しきみ)
シキミは、 常緑の形のいい 葉をもつ 樹である。 葉は濃緑で色もよく、肉質もたっぷりしている。 葉を裂くと、いいにおいもする。 秋には、黄色い実をつけるのだが、有毒だそうである。 材はせいぜい数珠玉につかわれるほかは細工 […]
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司馬さん一日一語☞『地女』(じおんな)
遊女に対する 女性一般をさす。 『ひとりね』のなかで、かれ(柳沢淇園)は遊女のことを、 「女郎さま」と、ゆかしげによぶのが、おかしい。 一方、良家の子女をふくめてふつうの女性のことを“地女”(じおんな)とよぶのである。 […]
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司馬さん一日一語☞『塩』
人類は 「交易」というものを、 塩の売買によって はじめた。 製塩地というのは、東西の古代史において、存在そのものが力をもっていた。 たとえば中国史を見る場合、乱がおこると、英雄豪傑はいちはやく岩塩の出る土地をおさえて支 […]
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司馬さん一日一語☞『士』(し)
士という字は、元来、 単におとこというだけの 意味であったらしい。 藤堂明保編「漢字語源辞典」によると、原義は「男の性器の立つ形を示す象形文字。 転じて<おとこ>の意味」ーーーまことに即物的である。 「論語」の時代になる […]
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司馬さん一日一語☞『サビエ』
匈奴の服装で 象徴的なのは、 サビエです。 サビエとはバックルのことです。 当時(紀元前の戦国時代)趙の武霊王がちょうど匈奴に接触する場所にいて、匈奴から圧迫を受けていた。 とてもあの連中にはかなわないから、われわれ自身 […]
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司馬さん一日一語☞『させて頂きます』
日本語には、 させて頂きます、 という ふしぎな語法がある。 この語法は、浄土真宗の教義上から出たもので、他宗には、思想としても、言いまわしとしても無い。 真宗においては、すべて阿弥陀如来ー他力ーによって生かしていただい […]
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司馬さん一日一語☞『婚礼』
伝統的な 日本の婚礼では、 神が存在しない。 両人が交わす 「盃」というものが 唯一絶対の 固めのしるしであり、 他はすべて 枝葉のことである。 日本の諸礼式は、公家はべつとして、室町期の武家礼式からはじまっている。 成 […]
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司馬さん一日一語☞『金平糖』
この南蛮菓子は 日本にキリスト教を もたらした 聖フランシスコ ・ザヴィエルの 置きみやげだという。 芥子粒(けしつぶ)に糖蜜(とうみつ)をしみこませ、 いったんはかわかし、次いで熱をくわえると、 芥子粒に内蔵された糖分 […]
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司馬さん一日一語☞『昆布』
日本人が 食用にしてきた あらゆる「め」のなかで 昆布が最も食生活に かかわりがふかい。 日本人は、古代から、海藻を食ってきた。 食用海藻のことを「め」といった (わかめ、あらめ、みるめ、などの言葉をおもいだせばいい)。 […]
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司馬さん一日一語☞『コロボックル』
国樔ノ人は、 一部の学者が 名付けている コロボックル (蕗ノ下ノ人) である。 国樔(くず)には、古代、国樔ノ人が棲んでいた。 国樔ノ人は、一部の学者が名付けているコロボックル(蕗ノ下ノ人)である。 かれらは、大和盆地 […]
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司馬さん一日一語☞『ご府内』(ごふない)
江戸市域のことを、 「ご府内」といった。 そもそも江戸とは、どこからどこまでをさすのか。 江戸の境界というのは、ながらく明瞭でなかったらしい。 江戸市域のことを、「ご府内」(ごふない)といった。 主として町奉行所でつかわ […]
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司馬さん一日一語☞『呉服』
和服が独自の発展を とげてからも、 これをしゃれて呉服 とよんだりした。 日本人の美意識と伝統技術が作りあげた粋というのは、なんといっても女性の和服であろう。 和服は、安土桃山という日本史に類のない芸術時代に大完成をし、 […]
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司馬さん一日一語☞『この世』
日本人は、 「この世」 ということばが 大好きなのである。 この世はままならぬ、とか、この世はつらい、とかいう。 このばあいの「この世」とは、「あの世」の対語で、浮世、というほどの意味だ。 むろん、中世末期以降の浄土教の […]
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司馬さん一日一語☞『居士』(こじ)
居士(こじ)とは 学徳のある在家の者が、 在家のまま仏道を修して 相当な域に達した場合、 敬してよぶ場合に つかわれる。 秀吉は信長の政権を武力で継承した。 相続するにあたって宗易(利休)という茶頭(さどう)をも“相続” […]
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司馬さん一日一語☞『御家中』(ごかちゅう)
現在でも大会社などでは 御家中といった感じの 文化が生きている。 石段の上から十数人の人達が降りてきた。 みな無口だが息が合っており、ごく自然にかたまりつつ、足どりをあわせておりてくる。おなじ会社の人達にちがいない。 ( […]
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司馬さん一日一語☞『興福寺』
日本文化史で、 もし、 「興福寺」という 存在を除外すると したら、様相が 変わってしまうに ちがいない。 それほど、この寺の存在はわれわれにとって重要である。 が、現存する寺としての興福寺には、往時の威容はない。ただ、 […]
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司馬さん一日一語☞『好色という文化』
江戸文化から、 その要素を除くと、 成りたちにくい。 ただこの好色のふるまいには、 歌論でいうところの“長高し”(たけたかし)という格調がなければならなかったようである。 さらには、よき好色の場は、江戸の吉原、京の島原、 […]
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司馬さん一日一語☞『皇紀』(こうき)
皇紀などという 珍妙なものを 公式に制定したのは、 民族主義が昂揚、 もしくは 昂揚せざるをえなかった 明治初年のこと で、太政官は『日本書紀』の紀年法を採用し、 西暦から六六〇年古くして神武天皇の即位の年とした。 『日 […]
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司馬さん一日一語☞『子』(こ)
女性の名で、 子とつくのは、 はじめは宮廷や公卿の 風であった。 平家物語に出てくる建礼門院は、平徳子。 文字にかくときには徳子とかくが、平素は子をはずしてよばれていたようにおもわれる。 子は、かるい尊称もしくはそれに似 […]
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司馬さん一日一語☞『言路洞開』
世論を政治に反映する という意味で、たとえ 過激者の意見でも 政治当路の者は よく耳を傾ける ということである。 文久元年、二年というのは桜田(井伊直弼の暗殺)のショックもあり、幕府の威信が地におちたどんぞこの時期で、 […]
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司馬さん一日一語☞『遣唐使船』
遣唐使船の構造は、 同時期の中国、 アラビア、あるいは 新羅の造船技術より はるかに劣っていた。 船底がタライのように扁平で、 むろん竜骨などは用いられていない。 全体が柳の葉形でなく樟の葉形で つまりまるまちっくて、骨 […]
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司馬さん一日一語☞『謙虚』
謙虚というのはいい。 内に自己を知り、 自己の中のなにがしか のよさに 拠りどころをもちつつ、 他者のよさや立場を 大きく認めるという 精神の一表現である。 自国の歴史をみるとき、狡猾という要素を見るほどいやなものはない […]