司馬さん一日一語☞『御家中』(ごかちゅう)


現在でも大会社などでは
御家中といった感じの
文化が生きている。

石段の上から十数人の人達が降りてきた。
みな無口だが息が合っており、ごく自然にかたまりつつ、足どりをあわせておりてくる。おなじ会社の人達にちがいない。
(御家中だな)と、不意におもった。私のように浪人ではない。
無用なことながら、『広辞苑』によってその意味を引用しておく。
家中 江戸時代、藩の家臣の称。藩士の総称。また、藩の意。
いまでも旧城下町にゆくと、話題が方言のことになったりする場合「ええ、それは町方のことばですね、しかし御家中ことばではそうは言いません」といったぐあいに生きてつかわれている。
ともかくも、現在でも、大会社などでは、御家中といった感じの
文化が生きている。

(彦根)城内の石段が背景だけに、江戸時代が生きているという
あざやかな印象があった。

背広が裃に見え、なかにはひたいがぬけあがってそのまま月代顏の人さえいる。
一様に折り目ただしく、御目見得以上の上士が下城してくるという感じである。

☞︎出典:『街道をゆく』24
近江散歩(朝日新聞社)

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