作家の司馬遼太郎さんは、
小説の中で「余談ながら」とか「この時期」という
自作自注を行間に差し挟んで、ストーリーを躍動させる。
辞書では見えない、一語の生い立ちやはたらき、
時代の風景まで際立てる。随筆や対談、講演も、また
あらためていうまでもなくとりわけ『街道をゆく』に
代表される紀行文に
その博学多識が遺憾なく披露される。
「言葉というものは、語る本人のためのものではなく、
他人のためにあるものだ」
という司馬さんの含蓄深い一節を心肝に得て、
ほぼ毎日一語ここに
紹介してゆきたい。
ことばが翼を得て、司馬さんの
作品に触れる機会のなかったひとびとにとっては、
司馬ワールドへの鳥羽口ともなれば、至極幸い。
司馬さんが教えてくれることばは、辞書のそれとは異なる。
『山』といえば叡山だし、『口』といえば京七口、
『友情』といえば新選組、近藤勇と土方歳三につながる。
一期一会の一日一語。
ことばのひとつひとつは、こんなにも素敵な衣装に
彩られているのかと!
司馬さんのことばと出会う愉悦を日めくりのように
ご相伴ください。

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