司馬さん一日一語☞『きれい』


日本人はよほど清潔
ずきらしく、清潔と
美が、一つことば
なのである。

日本人はよほど清潔ずきらしく、“きれい”ということばは、
たとえば、よく洗った皿がきれいである、あるいは、このビンきれいですか、という意味と同時に、
—-彼女、きれいだよ
という別義も持っている。清潔と美が、一つことばなのである。オランダ語もそうだそうで、オランダ人の清潔好きの説明によくつかわれる。
その二つの意味において大徳寺境内は伊勢神宮とならぶきれいさといっていい。
もっとも、伊勢神宮の場合、清潔を主題としてその空間ができあがっているのに対し、大徳寺は、本来ごたごたした仏教寺院を、拭ききよめ、掃ききよめ、洗いきよめることによって、透きとおったものを感じさせる美に達している。

☞出典:『街道をゆく』34 大徳寺散歩、中津・宇佐の道(朝日文庫)

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