司馬さん一日一語☞『徒士』(かち)


徒士(かち)というのは下士で、
戦場では騎乗せず、
家来をつれず、
ただひとり徒歩(かち)で歩く。

おなじ徒歩者でも足軽より上で、卒ではない。
士分(上士)と決定的にちがうのは、知行(領地)をもたないことである。
従ってその俸給の高は石高でははかられず、扶持米(ふちまい)ではかられる。
扶持米とは藩主の米蔵から給されるものでこんにちの給料に近い。
士分は、建前として藩主の領地の一部を分けられているから、
藩主に御目見得する資格があるが、給料制の徒士にはない。

徒士(かち)は、かたまって住んでいる。江戸でいえば府外の
八王子に集団的に住んでいたのが八王子千人同心、
府内の青山では徒士の住む区域を百人町とよび、
大久保にも百人町というのがあった。
徳川家では古くから徒士のことを、「御小人」(おこびと)ともよんでいた。
べつに、御家人ともいう。

 

☞出典:『街道をゆく』17
島原・天草の諸道 (朝日文庫)

 

おすすめ記事

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で