司馬さん一日一語☞『藩』(はん)


藩ということばは、
徳川時代の正式な
法制用語ではない。

幕府初期にはこの言葉さえ存在せず、中期ごろになってつかわれはじめ、幕末になって大いに奔走家のあいだで使用された。
新鮮なことばだったにちがいない。
薩摩の中村半次郎(桐野利秋)は事理にさとい人物だったが、当時としては珍しく文盲だった。
それが他藩の志士と交渉しているときに、先方をうやまって「弊藩」といい自分の藩を謙遜して「尊藩」とさかんにいった。
むろん逆である。
いずれにせよ、志士たちは僕、君、という呼び方を使いたがったように、藩といういかにもモダンなひびきをもつこの言葉をつかいたかったのであろう。
☞出典:「酔って候/あとがき」(文藝春秋新社)

 

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