司馬さん一日一語☞『随分だわね』


このことばづかいは、
明治三十年代から、
山の手を中心に
はやりはじめた
ものかと
おもわれる。

鴎外は、明治四十二年、『団子坂』という題の小品を書いた。
「……あなたが僕の傍に来て、いくら堅くしていたって、僕の目はあなたの体のどんな線をだって見ます。そしてあなたはそれを防ぐことが出来ないのです」
女、「随分だわね」と、下を向く。

漱石の『三四郎』のなかでも、美穪子が、軽く相手を非難するとき「随分ね」(ずいぶんね)という。
このことばづかいは、明治三十年代から、山の手を中心にはやりはじめたものかとおもわれる。
『日本国語大辞典』では“近代、多く女性の間に用いられる語”として、“非道であるさま。はなはだしく非難すべきさま”とある。

☞出典:︎『街道をゆく』37
本郷界隈(朝日文庫)

 

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