司馬さん一日一語☞『縄文時代』


日本の新石器時代は、
学者たちが
ヒトの暮らしへの
愛をこめて
縄文時代と命名した。

縄文時代とは、いうまでもなく、一万年間(米作が紀元前数百年前に伝来するまで)ほどつづいた先史時代の名称である。
その土器に縄目が刻まれていたことで、そう名づけられた。
土器は、瓶(ジャー)か壺(ポット)を連想すればよい。
土器は古代人にとって第二の胃袋であった。
それより前の旧石器時代には土器はなかった。
このため、食物の幅はかぎられていた。
土器という第二の胃袋が発明され、それがひろまることによって、人は、食物をポットに蓄え、ジャーで煮たきできるようになり、たべものの範囲がひろくなった。人口もふえた。
そういうめでたい時代を、単に新石器時代とよぶのはそっけなさすぎるために、縄文時代とよんでいるのである。

☞出典:『街道をゆく』41
北のまほろば(朝日文庫)

 

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