司馬さん一日一語☞『文様・紋様』


モヨウ・モンヨウ
という
ことばについて、
注釈ふうにふれて
おきたい。

着物などの柄を“模様”とよぶのは古くからおこなわれてきたことばだが、しかし模様は“空模様”というように、大体の様子のことをいったり、あるいはしぐさや所作の意味にもつかわれる。
つまり多義すぎるため、明治後紋の形や図象などにかぎって文様あるいは紋様というようになった。
中国のも、型にはまった文様がる。
建物の欄干などにつかわれる卍文、調度品につかわれる回文や雷文などがあり、回文・雷文はいまのわれわれにとって、ラーメンの鉢の内側の文様でなじみぶかい。
日本は文様の多い国である。
ひとめで日本を象徴する文様は、国旗か菊花紋ぐらいしかなく、圧倒的に多い文様は家紋である。
家紋はアジアでは日本しかない。
「縄文」という文様は、どうだろう。縄文時代における共通の文様だったといえる。
土器の発見は、人類を幸いにした。古代、ひとびとは土器に感謝したにちがいない。
土器に縄目をつけたのは、単なる装飾以上に、信仰がこめられていたはずである。

☞出典:『街道をゆく』38
オホーツク街道(朝日文庫)

 

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