司馬さん一日一語☞『飛騨工』


飛騨工(あるいは
斐陀匠/ひだのたくみ)
ということばは、
八世紀の文献に
すでにある。

飛騨人はどういうわけか建築、指物の技術をもって上代から知られていた。
奈良朝の「令」(りょう)によると、飛騨の国は諸国とことかわり、調・庸のかわりに、大工さんを(匠)を一定人数、一年交代で、都へさしだした。所管の官庁は、木工寮(もくりょう)である。

かれらは宮殿の建造、補修をするのだが、これが繰りかえされるだけに、上代での技術水準はいよいよ高くなったであろう。
いまも、飛騨の民家は、泥くさい重々しさがなく、直線的な軽快さがあって、しゃれている。
ついでながらこの飛騨の民家が、戦後の和風建築の造型性に、どこか影響をあたえているのではないかという気がしてならない。

☞出典:『街道をゆく』18
越前の諸道(朝日文庫)

 

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