司馬さん一日一語☞『隊』(たい)


隊という言葉は、
元来日本語には
なかった。

武士の組織単位のことは戦国以来「組」とよばれ江戸期の幕藩体制にもこの単位用語がつかわれた。
幕末の長州藩が幕府と対峙したときに挙藩一致の動員をおこなわざるをえなくなり、
軽格や平民から志願兵を募集し、騎兵隊と名づけたことから、
隊ということばがあたらしい日本語としてひろまるようになった。

当時の長州藩は士分の子弟で選ほう隊なども作ったが、村々の力士を動員して力士隊というのまでつくった。
それらを総称して「諸隊」とよんだが、この明治十年(西南の役)ごろの語感では、
隊とは庶民出身者の軍隊—鎮台—という感じが濃かった。

西郷隆盛ゃ 鰮かジャコか
タイに追われて逃げてゆく

西南戦争時卒伍のあいだではやった唄。
タイというのはいうまでもなく隊のことで、鯛にかけている。

 

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