司馬さん一日一語☞『軽忽』(きょうこつ)
室町時代には、
「軽忽」という言葉を
かるはずみということ
ですが、日常的に、
人によったら日に
二、三回ほど使ってた
ような多用言葉だった
ようですね。
その言葉が「閑吟集」には、
誰そよお軽忽 主あるを をしむるは 喰ひつくは よしゃ戯るる
とも 十七八の習ひよ そと喰ひついて給ふれなう 歯形のあれば
顕るる
要するに戯れにきた男があるんですね。
主ある自分を抱きしめてきた。
歯形だけはつけてくれるな、
人に知られるから、と。
こういうおおらかさというのは、
ちょっと脱亜的、しっかりした
儒教社会では、歌謡として表向きに出ることはない。
儒教というのは、リゴリズムな面は孝のほかは貞操だけです。
他の種子がまじると違う子供が生まれるといことは、
家畜が周りにいる社会では、現実的に知っているんですね。
だから、人間はそれをしちゃいけないーーー非常に貞操をやかましくいう。
けれど、日本は動物が周りにいないものですから、
女にやかましく貞操をいわない。
その気分がよく出ている。
☞(「中世歌謡の世界」から)
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芭蕉は、 木というより 大型の草という べきだろう。 “日本バナナ (Japanese banana)” などともいわれるらしいが、バナナの実は生らない。 暖地の植物である。 俳人の芭蕉が、伊賀から江戸に出てきたのは、寛 […]
司馬さん一日一語☞『畠』(はたけ)
「畠」という 文字が おもしろい。 漢字ではなく、 国字である。 日本では稲作水田のことを田というが、漢字の本家中国では、田の字は、稲作、麦作、または蔬菜畑を区別しなかった。 ところが、日本の奈良朝はコメをもって基盤とし […]
司馬さん一日一語☞『花のような』
花のような、 という ことばがある。 人間の美しさを 表現した 日本語としては、 これほどみごとな ことばはないだろう。 森蘭丸は、少年のころから織田信長にその才を愛され、側近に侍しながら、美濃岩村五万石をあたえられてい […]
司馬さん一日一語☞『ハマナス』
ハマナスは 北海道に多い。 また東北から 鳥取県にかけての 日本海岸地方の 海浜に自生する。 バラ科だそうだから、花はバラに似ており、トゲもある。 「バラ科なのに、どこが茄子なんです」 「実が梨の形に似ているからじゃない […]
司馬さん一日一語☞『万里の長城』
紀元前、 異民族の侵入をふせぐ ためにつくられた (万里の)長城は、歴世、修理と増築をかさねて、胡をふせぐための機能をよく果たした。 塞外の騎馬民族にとって、この長い壁があるために馬を越えさせることができなかったのである […]
司馬さん一日一語☞『標準語』
標準語というのは いつごろできたので あろう。 「左様でござる」と、歌舞伎などで武士がいう。 江戸落語で武士を演出する場合も、四角ばって、たとえば「岸柳島」で武芸自慢の侍が、「尊公も両刀をたばさんでおられるなら、むざと手 […]
司馬さん一日一語☞『備長炭』
備長炭は 熊野に多い ウバメガシという 樫の一種を乾留して つくる。 白炭ともいい、打ちあわせると金属音に近い音が出る。 ふつうの木炭(黒炭とよばれる)のように一時的に高い火力が出て持続しないのとはちがい、温度は低いなが […]
司馬さん一日一語☞『葡萄』(ぶどう)
ぶどうは ペルシャ(イラン) が原産地とある。 甲州ぶどうの原型をつくりあげるはなしをきいたことがある。 なんでも寿永年間というから平家が壇ノ浦でほろぶころ、いまの甲州ぶどうの雨宮さんの先祖の勘解由という土豪が、あるとき […]
司馬さん一日一語☞『べに』
べにという日本語は、 古くはあっても もっぱら紅をべにと 言いなじむのは、 室町ごろからでは ないか。 『万葉集』のころは、べにといわず、くれないとよんでいた。 その植物およびその色を指す。 語源はたれもが想像できるよう […]
司馬さん一日一語☞『桃』(もも)
桃の実も桃の木も、 中国の古代信仰 —道教—のなかで、 魔よけの呪力のある ものとされている。 この桃の実の呪術性については日本の古代にも影響されていて、『古事記』『日本書紀』の神話にまでその痕跡 […]
司馬さん一日一語☞『物の怪』(もののけ)
物の怪とは、 たとえば鬼や狐狸や その他の怪物のような 実体のあるものでは なかったようだ 源氏物語を読まれてご存じのように、平安期の文学や説話には「物の怪」(もののけ)からの恐怖が、どれを読んでもこまごまとしるされてい […]
司馬さん一日一語☞『木綿』(もめん)
モメン(木綿) という この植物繊維の 王者とも いうべきものが、 日本に古来あった わけではない。 戦国期から、きちょうなものとしてほんの少数の武将たちに用いられはじめたのである。 説明的には、平安初期に三河の海岸に漂 […]
司馬さん一日一語☞『主水』(もんど)
主水というのは、 古語である。 奈良・平安朝の ころの役職名で、 語源はモヒトリだ という。 徳川家康が江戸に入ったのは天正十八年(1590)。 その草創の最大の事業のひとつが、上水道を設けたことである。 その設計と施工 […]
司馬さん一日一語☞『山伏』(やまぶし)
山伏は 不動明王を 尊崇する。 不動明王の絵像か彫像を背中の笈におさめて歩き、祈祷をたのまれると、この笈を地上にすえて壇とし、不動明王をかざり、密具をつかってそれをやる。 山伏はおそろしいばかりの験者(げんざ)としてとり […]