司馬さん一日一語☞『弁財天』


弁財天(弁天)は、
もとは
インドの土俗神
だった。

ガンジス川など大河を象徴する神で、ひょっとすると蛇への古代信仰の発展したものだったかもしれない。
女神である。
琵琶を弾いている。
元来が河神であるために、日本では琵琶湖の竹生島や厳島など、湖や海の小島にまつられてきた。
ともかくも、頼朝は鎌倉に府をさだめて早々、鶴岡八幡宮を造営するとともに、江ノ島に弁財天(べんざいてん)をまつった。
寺ではなく、神社の形式をとった。
頼朝が、“御正体”(おしょうたい)として八臂(はっぴ)の弁財天を寄進した。
それとはべつに、この神社は、裸形で琵琶を弾く形の弁財天(?)がふるくからつたわっていることで知られる。
少女のかたちをし、性器までそなえている。
鎌倉のリアリズムのゆきつく果てかとも思えるが、時代はよくわかっていない。

☞出典:『街道をゆく』42
三浦半島記(朝日文庫)

 

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