司馬さん一日一語☞『一文不知』


法然は、念仏は、
「一文不知」
(無学であること)
の心にやどるとき
輝きがあるという。

「一文不知」(いちもんふち)ということばは、
日本語としては、
法然が臨終の前、弟子から請われ、遺戒として書いた

ごくみじかい文章(「一枚起請文」)につかったことばである。
その後、法然の徒のあいだで
つかわれるぐらいで、共有化の未熟なことばといっていい。

法然は、念仏は、
「一文不知」(無学であること)の心にやどるとき
輝きがあるという。

不幸にして「一代の法」(釈迦一代の教え)を
くわしく学んだとしても、

なにも知らない「愚とん」として自分の心を置かねば
光をうしなうというのである。

☞︎出典:『ある運命について』(中央公論社)

 

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