月: 2019年1月の記事一覧
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司馬さん一日一語☞『江戸府の文化』
江戸府の文化には 名状しがたい 魅力がある。 どうも、キザという精神は 日本の地方文化のなかで江戸文化にしかない。 要するにキザはキザとして調子をあわせ、その場の会話を無意味に 楽しんでゆくのが大事なところで、それをから […]
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司馬さん一日一語☞『越前和紙』
越前における 奉書、鳥子は、 江戸時代にすでに 評価が確立していて、 越前の重要な産物で あった。 越前今立で漉かれてきた和紙は、 懐紙や往来物につかう安っぽい紙ではなく、奉書である。 元来は、平安期の院宣、室町将軍の御 […]
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司馬さん一日一語☞『蝦夷』
奥州王朝の 最後の光芒を 放ったものが いわゆる 藤原三代であり その首都が平泉である。 中央の貴族たちは、 これを「蝦夷」 とよんだ。 われわれの日本史のなかでは白河以北のいわゆる「奥」はながいあいだ独立国であった。 […]
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司馬さん一日一語☞『英雄』
英雄とは、 巨大なる自己と、 さらにはその自己を 気球のように 肥大化させてゆく 人物のことである。 名声への自己陶酔と、 さらなる名声の獲得にむかって 行動する精神のダイナミズムと考えていいだろう。 それらを一人格のな […]
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司馬さん一日一語☞『雲水』
雲水という ことばは、 禅宗だけのもの である。 『広辞苑』によると 「(行雲・流水のようにゆくえの定まらぬことから)所定めず遍歴修行する僧。行脚僧」ということになっている。 のちに文学者(俳人)として名を知られるように […]
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司馬さん一日一語☞『浮気者』
浮気者というのは、 度はずれて 自己顕示欲がつよく、 自分の武名を 高めるためには まわりの迷惑を 考えない男という 意味である。 この時代(戦国期)、 武辺者といわれるほどの男にはこの種の者が多く、 いわば戦国期以来の […]
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司馬さん一日一語☞『右翼・左翼』
「右翼」といっても、 もとからそうした 思想があったという わけではありません。 大正末年に「左翼」は生まれ、 その反作用として「右翼」が生まれたのです。 「左翼」とは、もともと十八世紀末のフランス国民議会の席が、 議長 […]
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司馬さん一日一語☞『于闐』
東大寺という存在と、 その根本経典である 『華厳経』の ふんい気を感じるには、 古代于闐国の存在は 外せない。 正確にいえば、 東大寺は古代于闐国の文化がゆきついた端であるともいえる。 古代の于闐(うてん)は、 タリム盆 […]
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司馬さん一日一語☞『卯建』
うだつは、 家々の櫛比した 町家にかぎられる。 日本では室町末期に洛中洛外図屏風に見られるというが、 形としてなっとくできるそれは江戸期に入ってからで、 市街地の商家などに多い。 隣家との境に類焼ふせぎのための屋根つき・ […]
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司馬さん一日一語☞『鵜飼』
鵜飼というのは まことに 奇妙な漁法だが、 『日本書紀』にも 『古事記』にも 出ているから、 よほど古い漁法 なのであろう。 だれが発明したものでもなさそうで、中国のとくに江南の地には、 杜甫の詩に詠まれた昔からごく一般 […]
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司馬さん一日一語☞『入れこむ』
耳にさわるのは、 「入れこむ」という 動詞である。 たとえば、 「最近、釣りに入れこんでいます」 というふうに、である。 熱中する、という 意味らしい。 おそらく。 『入れあげる』の誤用かとも思われる。 入れあげるは、主 […]
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司馬さん一日一語☞『イヨマンテ』
イヨ(オ)マンテ というのは 『広辞苑』に 入っているほどに、 よく知られた ことばである。 ふつうアイヌの熊祭のことをいうが、クマだけでなく 人間のたべものになってくれる生物は、食後、 すべて神(カムイ)として、 イナ […]
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司馬さん一日一語☞『イネ』
イネという言葉は、 かって 百越(ひゃくえつ)と よばれた 古代タイ語族系の末裔的 な言語である 中国南部の汕頭(スワトー)音の イネから 出ているといわれます。 さらには中国で稲が栽培されはじめたのは 紀元前三〇〇〇年 […]
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司馬さん一日一語☞『犬』
犬が、 多少とも物を思う ようになると、 日本人を訝しむ かもしれない。 今でこそ犬も非常な地位を得ているが、 明治以前は、犬畜生などといって下等なものとされていた。 古来、犬という文字がつく単語にろくな言葉がない。 植 […]
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司馬さん一日一語☞『一所懸命』
自分の田畑という 一所のために 命を懸けるという あり方が、 一所懸命という 慣用語を生んだ。 一所懸命(いっしょけんめい)という姿勢は、律令時代の農民には なかったであろう。 その一所のために自作農は新興有勢家を頼り、 […]
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司馬さん一日一語☞『一里』
一里は、 いうまでもなく 三十六町である。 江戸時代の一里塚も、官道の三十六町ごとに、 道路の両側に一基ずつならべて築かれていた。 しかし日本の一里が上代から三十六町であったということはない。 奈良朝以前は、文化は諸事朝 […]
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司馬さん一日一語☞『一文不知』
法然は、念仏は、 「一文不知」 (無学であること) の心にやどるとき 輝きがあるという。 「一文不知」(いちもんふち)ということばは、 日本語としては、 法然が臨終の前、弟子から請われ、遺戒として書いた ごくみじかい文章 […]
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司馬さん一日一語☞『一味』
ある目的のためには、 身分の上下はない。 みな気をそろえ、 平等に力をつくそう。 ということから、 一味が社会的な用語に なった。 もともと仏教語で 「法(絶対の真理)の前にはすべて平等である」 というのが原意で、願阿弥 […]
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司馬さん一日一語☞『いじめる』
いじめる、という 隠微な排他感覚から 出たことばは、 日本独自の秩序文化に 根ざしたことば というべきで、 たとえば日本語が古い時代に多量に借用した漢語にもなく、 現代中国語にもなさそうである。 英語やフランス語にもない […]
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司馬さん一日一語☞『殷』
殷人は黄色人種 (モンゴロイド)には ちがいないが、 それが、 どういう経緯で 高度の青銅冶金技術を 手に入れたか、 じつに ふしぎというほかない。 青銅文化の歴史は、 紀元前一六〇〇年ぐらいに成立した殷よりも、西アジア […]
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司馬さん一日一語☞『安堵』
中世の日本人にとって もっとも重要な 法律用語の ひとつであった。 京都の天皇と公家たちをもって、 「公」とし、公の名で日本国の土地と人民を独占したのは奈良・平安朝の律令体制で、最初から無理があった。 この体制の前提は社 […]
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司馬さん一日一語☞『アリノミ』
平安朝のひとびとが よほど梨を好み これを愛していた 証拠に 名前まで変えて 「アリノミ」と よんだほどだった。 無シということばを忌んで、アリノミとしたのである。 日本における梨は、 本来、小さな実だった。 蒔絵に金粉 […]
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司馬さん一日一語☞『あり』
「あり」というのは、 記紀や万葉の語感では ずっと居つづけている という意味がこめられて いるように思える。 夜が明けても月が空に居つづけるためにありあけであり、 また『万葉集』第八十七の 「ありつつも君をば待たむ打ち靡 […]
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司馬さん一日一語☞『アヅミ』
アヅミのヅミとは、 トモ、ツモという 古代語と同義語 だったのではないか。 強いて漢字にすると、 友、つまりグループということだろう(他の例でいうと出雲、大伴などがある)。 かれら海人の居住地が、アヅミという地名になって […]
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司馬さん一日一語☞『厚司』
「厚司」という 日本の衣類がある。 明治ごろから職人や 漁師の労働着として つかわれた 一種の羽織で、 錦糸で丈夫に織られて おり、紺もしくは 白黒の大名縞のものが 多い。 歌舞伎では「義経千本桜」で 渡海屋銀平が厚司( […]
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司馬さん一日一語☞『新しい』
新しいという字は、 字解すると、 「木を切って立つ」 ということですね。 立ち木を切って生木の匂いがプンプンする、 それが新しいという字になった。 古代中国の殷帝国が始まる前は、 華北地方は密林だったという説があります。 […]
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司馬さん一日一語☞『阿修羅』
阿修羅は もとは古代ペルシアの 神だったといわれるが、 インドに入り、 時がたつにつれて 次第に悪神(非天)に なった。 しかしながら 興福寺の阿修羅(あしゅら)にはむしろ愛がたたえられている。 少女とも少年ともみえる清 […]
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司馬さん一日一語☞『葦・葭』
周知のことだが、 葦も葭も、 一つの植物を さす異称である。 葦が悪(あ)しに 通ずるために、 わざと 善(よ)しに 言いかえて 中世の農民たちは 排水のわるい湿地の 開墾をはじめた のではないか。 葦(あし)・葭(よし […]
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司馬さん一日一語☞『あざらし』
あざらし。 漢字をあてると、 海豹あるいは水豹。 北海道の氷雪の海に 棲んでいて、 日本の近海にはいない。 でありながら、平安時代の上級武士が武装に綺羅をこらすとき、この海獣の毛皮は欠かせないものだった。 太刀の尻鞘につ […]
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司馬さん一日一語☞『浅葱裏』
江戸時代のことばで、 田舎者や 野暮天のことを、 「浅葱裏」といった。 江戸時代、 田舎の藩の勤番侍などが、 着物の裏に浅葱もめんをつかっている。 そういうのが野暮なことから、 そういう言葉ができたのだろう。 お酒のまわ […]
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司馬さん一日一語☞『愛』
明治以前、 愛はあまり 徳目としては 言われなかった 愛という語は、在来の東洋思想では使用頻度がきわめてすくなく、 明治後キリスト教が入ってきてから訳語としての熟語(たとえば友愛、博愛)がさかんにつくられ、 徳目としても […]