司馬さん一日一語☞『風流』(ふりゅう)

風流というのは、
本来“教養があって
雅びている”という
意味で、
中国の六朝時代に、
読書人の暮らしの
スタイルとして
流行した。

六朝の知識人たちは政治論議を野暮とし、詩や琴棋(きんき)書画の中で遊ぶことを人生の最高の価値とした。
唐になると、すこしかわる。
この中国史上、もっとも華麗な文明をつくりあげた帝国は、一面において、知識人が前時代の六朝の隠遁趣味におちいることをいましめあうところがあった。
このため風流という言葉を、多少意識的に下落させた。
風流に、男女の情愛が加わったのである。
たとえば、唐の玄宗が、宮廷の庭で、“風流陣”というあそびをした。
自分の妃に宮女百余人を指揮させ、みずからは貴人という階級の側室たち百余人を指揮して闘った。
また唐の敬宗は“風流箭”という紙の矢をつくり、矢に麝香などの香をしみこませ、宮嬪をあつめて射るというあそびをした。

日本は、飛鳥時代までは六朝の影響をうけ、奈良朝以後は唐の影響をうけた。
しかしこのことばは、あくまでも貴族や知識人のものだった。
平安末期になると、庶民が大きく出てくる。
かれらは、今様(流行歌)を好んだ。

☞出典:『街道をゆく』32
阿波紀行、紀ノ川流域(朝日文庫)

 

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