司馬さん一日一語☞『葡萄』(ぶどう)

ぶどうは
ペルシャ(イラン)
が原産地とある。

甲州ぶどうの原型をつくりあげるはなしをきいたことがある。
なんでも寿永年間というから平家が壇ノ浦でほろぶころ、いまの甲州ぶどうの雨宮さんの先祖の勘解由という土豪が、あるとき山に入って山ぶどうを見つけ、これを採って栽培と改良を加えたというのである。
もっとも、その山ぶどうはさし木の台につかったともいう。
さし木にしたのは中国渡来のぶどうの種の実生(みしょう)のものであるという。
しかし葡萄は外来語で大和言葉にそれがないところをみると、多湿な土地をきらうこの植物は、日本人の遠い先祖の生活のなかにあまり入っていない植物だったのではないか。
植物の本をみると、ぶどうはペルシャ(イラン)が原産地とある。
唐詩選に「葡萄ノ美酒、夜光ノ杯」とあるように中国人にとってもこれは異国的なものであったのであろう。

☞出典;『街道をゆく』4
五箇山街道(朝日新聞社)

 

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