司馬さん一日一語☞『藩邸』(はんてい)

「藩邸」
というよび方は
幕末以後のことばで、
大名の上屋敷・
中屋敷・下屋敷を
総称することばである。

上屋敷は、将軍からの拝領地に建てられているから“拝領屋敷”などともよばれ、そこで大名が家庭を営んだ。
中屋敷・下屋敷は、ふつう町人からの借り地の上に建てられた。
それらには、参覲交代のときにお供してきた“勤番侍”が住んだ。
大名には江戸詰の家来がいて、定府(じょうふ)とよばれた。
定府の者はたいてい殿様とともに上屋敷に住んでいた。
藩邸には、藩校がおかれることもあった。
備後福山十一万石の本郷中屋敷には、邸内に誠之館が置かれていた。
国もとの誠之館は有名だが、江戸にもあったことは存外知られていない。
阿部正弘が江戸に設けたもので、本郷の中屋敷の長屋門を入ると、正面が学堂になっていて、おごそかなものだったらしい。

︎☞出典:『街道をゆく』37
本郷界隈(朝日文庫)

 

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