司馬さん一日一語☞『樒』(しきみ)

シキミは、
常緑の形のいい
葉をもつ
樹である。

葉は濃緑で色もよく、肉質もたっぷりしている。
葉を裂くと、いいにおいもする。
秋には、黄色い実をつけるのだが、有毒だそうである。
材はせいぜい数珠玉につかわれるほかは細工物にならず、衣食住の役に立たないながら、仏のための役をはたしている。
樒は漢字だが、べつに国字があって木へんに佛と書く。
文字にこの木の用途があらわされている。
日本ではその枝を切って神にささげる木としては、木へんに神と書く榊(さかき・国字)がある。
シキミもサカキも、葉の色や形が似ているが、神と仏と用途がわかれている。
シキミに漢字がありながら国字がつくられたのは、神と対にしたい気分があったのにちがいない。

シキミは、寺や墓地などに植えられる。
また枝は仏壇に供えられて、供花(くげ)としてはなくてはならぬものとされている。

さらには、シキミの葉から抹香をつくる。

☞出典:『街道をゆく』26
嵯峨散歩、仙台・石巻(朝日文庫)

 

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