司馬さん一日一語☞『一里』

一里は、
いうまでもなく
三十六町である。


江戸時代の一里塚も、官道の三十六町ごとに、
道路の両側に一基ずつならべて築かれていた。
しかし日本の一里が上代から三十六町であったということはない。
奈良朝以前は、文化は諸事朝鮮から受けいれたといってよく、
度量衡もほぼそうであり、
寸法は高麗尺(こまじゃく)を基準とし
高麗尺五尺をもって一歩とし、
何歩が一町であったかわすれたが、
ともかく
五町が一里であった時期がある。

奈良朝に入ると、度量衡は朝鮮式がすてられ、
中国式にきりかえられ、唐尺が採用された。

唐の大尺の六尺が一歩である。
三十六歩が一町で、六町が一里になった。
つまり六進法になっている。

この六進法ということで変わりがなかったが、いつのほどか、
地方によって六町一里でなく
その六倍の三十六町が一里になった。
「三十六町をもって一里とせよ」ということになったのは、
秀吉政権の末期である。

※一町(=六十間)=360尺・一里=三十六町=12960尺=3,927km

☞出典:︎『街道をゆく』10
羽州街道・佐渡のみち(朝日文庫)

 

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