司馬さん一日一語☞『パニック』

ギリシア神話のなかの
牧神パンは
たえず葦笛を吹き、
美少女とみれば
追いかけ、
気まぐれでもある。

突如怒りだし、羊や牛馬たちを走らせる。
パニックという語の源になった。

1929(昭和四)年のアメリカの株式市場にパニックがおこった。
つづいてやってきた大恐慌は、史上最大の物だった。

世界じゅうの経済を崩壊させ、瀕死の大不況がはじまった。
各国は、懸命に大不況から脱出すべくあがいた。
ドイツやイタリアという、植民地をもたない新興工業国は“共栄圏(アウタルキー)”の創設をおもいついた。
自国の製品を“勢力圏(なわばり)”の国々に売りつけるというやり方であった。
が、縄張りは、力ずくでつくりあげねばならない。
そのために、まず自国の国内から自由をうばい、一国統制主義(ファッシズム)で束ね、国家を戦争機械にする必要があった。
ムッソリーニやヒトラーの出現である。
かれらは、人間ならだれもがもっている郷土主義(ナショナリズム)というガスを国家という鉄の筒に詰めこみ、いやが上にも揮発性を高めた。
日本の場合、陸軍軍人が主導した。

出典:「真珠湾1」より

 

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