司馬さん一日一語☞『美女の基準』

平安時代は、
独自の基準を
生んだ。


私の中のアメリカ女性像というのは、小説と映画がなかだちになって出来あがっている。

アメリカ人の男性は女性の乳房の大きさと脚線美に関心をもつ。
日本の場合、大正期までは女のハト胸と出っ尻は下品とされていた。
長安のある時期、豊頰(ほうきょう)で細目で肉づきのいい女性が美人とされた。
玄宗皇帝が愛した楊貴妃がそうだったから。
楊貴妃型が日本に影響して、天平美人を出現させた。
奈良の正倉院の屛風画「鳥毛立女」(とりげりゆうじょ)を想像すればいい。
平安時代は、独自の基準を生んだ。大和絵の画法の用語である「引目鉤鼻」(ひきめかぎばな)が美女の基準だった。
その例は、「源氏物語絵巻」でみることができる。
一線の目、小さなL字の鼻、みせでしかない唇、それに下ぶくれの顏、光源氏が愛した女たちがみなそうだとしても、現代ではむしろ無器量のほうにいれられてしまう。

 

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