司馬さん一日一語☞『殷』

殷人は黄色人種
(モンゴロイド)には
ちがいないが、
それが、
どういう経緯で
高度の青銅冶金技術を
手に入れたか、
じつに
ふしぎというほかない。


青銅文化の歴史は、

紀元前一六〇〇年ぐらいに成立した殷よりも、西アジアにおいて
はるかに古くから発達していたことは
いうまでもない。
ただ中国にあって、
殷(いん)が、すでに考古学的成果であきらかなよう
に、
助走なしにいきなり(と思われる)絢爛豪華な冶金文化の華を
ひらかせるのである。

傅斯年がいう殷のモトが夷(周辺民族)であるという説は、
満州、朝鮮から山東半島に移動した「東夷」への想像と
重ねているし、また出土している人骨からみても、
殷人は黄色人種(モンゴロイド)にはちがいないが、
それが、どういう経緯で高度の青銅冶金技術を手に入れたか、
じつにふしぎというほかない。
ともかくも殷もまた冶金という技術を持って
中原の穀倉地域に入り、自己の文化を持ちこむことによって
漢民族文明の形成に決定的な役割を果たした。

☞出典:『歴史の舞台』(中央公論社)

 

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