司馬さん一日一語☞『樟』(くす)

クスというのは
“奇し”からきた
ことばであろう。

この常緑樹は、何百年の苔にまみれた老樹であっても、季節になればさかんに若葉を吹きだす。
それも、あふれるようにである。その若葉がまことに奇しい。

また、つやつやとなめし革の光沢をもつ葉も奇しいのである。
さらには、根と幹や枝、葉にいたるまで樟脳をふくみ、それが木にとって虫よけになっているのも奇しい。

古代人にとって、丸木舟の材だったのである。
そういうことがあって、古代、樟の老樹は崇められ、いまもそうだが、シメナワがめぐらされて神木になっている場合が多い。

☞出典:『街道をゆく』32
阿波紀行、紀ノ川流域(朝日文庫)

 

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