司馬さん一日一語☞『戒名』

死者に戒名をつける
などという奇習が
はじまったのは
ほんの近世になって
からである。


戒名(かいみょう)の話をしますと、
要するに日本仏教は中国経由の仏教でしたから、漢字表現で入りました。
つまりお坊さんは中国人でしたから、当然中国の名前です。
日本でお坊さんになるということは中国名前になることだったのです。
その日本のお坊さんが葬式を主導するようになったのは、室町ぐらいからだと思います。

俗人が死ぬと、僧になったということにして、中国名前がつけられました。
それを戒名といったわけです。

いま、中国名前をお坊さんにつけてもらって、それを戒名にして喜ぶのは、お釈迦さんと関係ないことです。
その点が、どうもわれわれは日本仏教からだまされているような—–。
要するに戒名は、仏典には存在しません。
日本だけの俗風というべきもので、江戸中期、町人や百姓が力をもってきますと、寺ではかれらにしきりにすすめました。
そのため幕府は禁令を出し、百姓・町人のとくに由緒ある者以外は、院号、居士号、大姉号をつけてはいけないと禁じます。

門徒の場合、死ぬと、釈何とかと、二字だけつきます。

釈とはお釈迦さんの種族名のシャカ族を示します。
そのシャカ族の「釈」のあとに二字の中国人名前をつけてもらってそれが本来の門徒の戒名でした。

☞出典:︎『歴史と風土』(文春文庫)

 

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