司馬さん一日一語☞『士』(し)

士という字は、元来、
単におとこというだけの
意味であったらしい。

藤堂明保編「漢字語源辞典」によると、原義は「男の性器の立つ形を示す象形文字。
転じて<おとこ>の意味」ーーーまことに即物的である。
「論語」の時代になると、士の内容が飛躍し、精神的要素がつよくなる。
「論語」の泰伯篇に、「士は以て弘毅ならざるべからず」とある。『弘毅』とは、心ひろく、意志つよきさま。
さらに、「任重くして道遠し。仁以て己が任と為す。亦重からず乎。
死して而して後已む。亦遠からず乎」と、

まことにたかだかとしている。
吉川幸次郎は「論語」(中国古典選)のなかで、士のことを、
原義としては「家老でない若手の官吏をさす」としつつ。
この場合、「ひろく教養ある人間と解していいであろう」という。
「士農工商」というのは、中国のことばである。
紀元前の中国の古典「国語」にすでに見えていて、以降、中国や朝鮮における儒教文明の四民のわけ方の慣用句になってきた。


「士」より

 

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