司馬さん一日一語☞『同朋衆』

室町期の
同朋衆は、
日本文化に
大きな貢献をした。

一遍は鎌倉期の人だが、かれがはじめた時宗は室町・戦国期になると、ほとんど形骸化した。
たとえば在野の学芸の徒が、みずから時宗の徒である(世間の外の者である)と身分設定することによって、権力者と同座することができた。
あるいは権力者に物を教えたり、権力者のために遊芸をしたり、さらにはそういう才学芸能をもたぬ者は、単に権力者のために茶を運んだり、身のまわりの世話をしたりするようになった。
そういうひとびとを、室町幕府は、「同朋衆」(どうぼうしゅう)とよんだ。
室町期の同朋衆は、日本文化に大きな貢献をした。
能を創りあげたのは、室町幕府の同朋衆であった観阿弥であり、大完成させたのはおなじく同朋衆であるその子の世阿弥で、将軍義満に寵愛された。
また将軍義政の同朋衆には、生花の祖ともいうべき立阿弥、台阿弥がいたし、さらに茶の名手として能阿弥、相阿弥といった草創の達人がいた。
戦国の諸大名の職制においても、室町将軍家にまねて同朋衆の制度があった。

☞出典:『街道をゆく』24
近江散歩(朝日新聞社)

 

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