司馬さん一日一語☞『厄介』(やっかい)

相続権のない
弟ぶんは、
江戸時代では、
士農工商とも、
「厄介」とよばれた。

山内六三郎は、江戸の人である。のち、堤雲と号した。
六三郎の父山内豊城は、旗本の用人だった。
旗本の用人は大名の家臣とはちがい、一般に渡りの事務職人というべき存在で、才覚人が多かった。
六三郎はその名のとおり、豊城の六人の子のうち、男でかぞえて三番目である。
こういう相続権のない弟ぶんは、江戸時代では、士農工商とも、

「厄介」
とよばれた。
厄介払いとか厄介者とかの厄介で、このえげつない内容の言葉が、江戸期「家長(長兄)の傍系親」をさす正式の法制用語として使われていた。
一種の身分用語といえる。
六三郎のような「厄介」は、他家の養子になるか、学問か技芸を身につけて世を送らねばならない。

☞出典:「日本居住誌」第2回より

 

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