司馬さん一日一語☞『出戻り』(でもどり)

江戸期、
航海のことばが、
暮らしのなかまで
入ってきた。

港の船がいったん沖へ出て、天候のかげんでまた港にもどることを“出戻り”というが、
転じて、いったん婚いだ娘が実家にもどっている状態をもさした。

船の船尾を艫(とも)という。
船の船尾にむかってまっすぐに背後から吹いてくれる風のことを“真艫”というのである。
転じて、正直であること、まっとうであることの意になった。

(酒も)伊丹・池田・灘五郷の醸造業者によって大量につくられ、樽廻船で江戸に送られた。
江戸付近でも酒はつくられたが、水がわるいのと技術の遅れのためにまずかった。
このため,江戸では下り(上方から江戸へ)の酒がよろこばれ、下らない酒はまずい、とされた。
このことからつまらぬコトやモノを“くだらない”(江戸弁)というようになったという説もある。
江戸末期には飴まで上方からくだってきて、“下り飴”という呼び声で売られたという。
醤油のことだが、幕末、紀州人の手で利根川水系の地でこんにちの濃口醬油が製造販売されるまでのあいだ、上方でいう薄口醤油が江戸に送られていた。

☞出典:「大坂」より

 

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