司馬さん一日一語☞『ダテ』

男を立てるから
男だてといい、
それから独立して
「ダテ」という
ことばが出来た。

元和九年七月、将軍秀忠は、嗣子家光に世をゆずった。
家光は父の秀忠とともに上洛して、将軍宣下を受けた。
諸大名皆これに供奉したが、伊達政宗の供揃いは美をきわめ、伊達模様、伊達衣裳と京わらんべに言われ、これが「ダテ」ということばのおこりだという説がある。
しかし、これはあやしい。
この時の伊達家の武士らの装束が華麗であったことは事実であるが、「ダテ」ということばはこの以前からある。
「古今著聞集」に西行法師のことを「世を遁れ身を捨てたれども、心はなほたてたてしかりけるなり」とあるから、鎌倉時代にはすでにあったのだ。
男を立てるから男だてといい、それから独立して「ダテ」ということばが出来、それがいろいろな意味に変化して来たのである。

☞︎出典:『馬上少年過ぐ』(新潮社)

 

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