司馬さん一日一語☞『イヨマンテ』

イヨ(オ)マンテ
というのは
『広辞苑』に
入っているほどに、
よく知られた
ことばである。

ふつうアイヌの熊祭のことをいうが、クマだけでなく
人間のたべものになってくれる生物は、
食後、
すべて神(カムイ)として、
イナウ(幣)を立てて天国に送られる。

この送りをイヨマンテという。
『そうすることによって、カムイは天国へ行って多くの神々に、
アイヌのところで歓待されたことを自慢し、
それを聞いた神々は、
そのアイヌのところにやってくる
というわけである』
(宇田川洋・イオマンテの考古学)
だから人間たるものは
神聖場所を設けて、
たべた貝殻をすべてそこに置き、
幣(ぬさ)を立てて天に送らねばならない。

この思想によって、古代人は貝塚をつくった。
食用動物だけでなく、食用植物も、つかっている器物も
カムイとして送った。

☞出典:『街道をゆく』38
オホーツク街道(朝日文庫)

 

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