司馬さん一日一語☞『ほどのよさ』

この当時
(織豊時代)の
「ほどのよさ」
というのは
その後のいい加減、
という
意味でなく、
出しゃばらない、
という
意味であった。

長宗我部盛親は性格が温厚で、口数がすくなく、おのずから長者の風のあったために、大坂城内では、
「宮内少輔どののほどのよさよ」
と、愛敬された。
盛親は政治を好まないために城内の政争には加わらず、評定などのときには、真田幸村と後藤又兵衛をつねに立て、みずから他人に先んじて発言するというようなことは一度もなかった。
後藤又兵衛が、あるとき座談して、
「土佐の国衆とは、なんと懐かし心の深いことか」
と、洩らした。
又兵衛は、盛親のまわりに寄り添うようにあつまってきている土佐人のたたずまいをみて、そう評したのである。

☞出典:︎『城塞』(新潮社)

 

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