司馬さん一日一語☞『がんまつ』

奈良県方言に
「がんまつ」という
ことばがある。

人がなんといおうとも、
あるいは人の利害や感情にはいっさいおかまいなしに、めざす物に
猿臀(えんび)をのばし、
摑みどりにつかんで放さぬという性格をいう。

1931年、関東軍の一部参謀が独自の構想をもち、その構想の信者になって暴走を企画し、
満州で勝手に事をおこすことによってついに中央をひきずりこみ、
結局十五年戦争の業火のなかに国家と国民をたたき込んだという
事例をわれわれは知っている。

事をおこした当時の関東軍の“志士的参謀”にほんとうの意味の愛国心や人間愛などはなく、
あったのはもっとも悪質な英雄的自己肥大だけでであった。
こういう肥大の状態を「がんまつ」というのである。

 

☞出典:『街道をゆく』24
奈良散歩(朝日新聞社)

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